【第1回】かんがえるソファ+「ジェンダーのステレオタイプについて考えよう」
- kikaku SLA
- 2021年6月28日
- 読了時間: 8分
6月28日に、第1回かんがえるソファ+(プラス)を開催しました!
かんがえるソファ+では、通常のかんがえるソファで扱う身近なテーマの代わりに、時事的な社会問題を取り上げ、それについて考えを深め合っていきます。
第1回のテーマは「ジェンダーのステレオタイプについて考えよう!」。
前東京オリンピック・ パラリンピック組織委員会会長の森喜朗氏の女性蔑視発言※を手がかりに、ジェンダーの本質的な問題について、7名の参加者と探求していきました。
※森氏は、2021年2月3日の日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会にて、「女性理事を選ぶってのは、文科省がうるさく言うんです。だけど、女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」と発言。その後、女性蔑視発言として国内外で非難され、自身の職を辞任しました。(参考URL「JIJI.COM『森喜朗会長の女性蔑視発言とその後の経緯』:https://www.jiji.com/jc/article?k=2021021100654&g=spo)
~日常生活で感じるジェンダー問題~
アイスブレイクでは、日常場面で感じる(感じたことのある)ジェンダー問題について、お互いに紹介しました。
・女性が家庭を守り、家事・育児を担当し、男性は仕事をする。
・合コン・街コン・出会い系アプリで、男性のほうが参加費・利用料金高いのはなぜか?
・お母さん食堂など、行き過ぎたジェンダーに嫌悪を感じる。男女で対等な関係を模索したい。
・eスポーツは身体差がなさそうだけど、女性のプロゲーマーはなかなかいない。年配の方のほうがジェンダーのステレオタイプを持っているとは限らないのでは?
・日本では、女性のほうが男性より給料が低い。
・研究室の中で、男性が料理をするとすごいねと盛り上がるけど、女性の人が料理をしても盛り上がらないので、女性の料理は当たり前に思われているのかも。
・オリンピックの話題で、オーストラリアの重量挙げの選手にトランスジェンダーの方がいるなど、最近話題になっている。ジェンダー問題と向き合う転換期が今で、自分たちがよく考えていかなければいけない。
・研究者としてのキャリアについて、女性は研究業界でなかなかいない。対策としては、女性限定で教員を公募する、研究費の助成も、女性専用の枠があるが、逆に男性がチャレンジできないことに違和感がある
・アニメやマンガなどでジェンダー問題に触れてきた。お母さん食堂にも興味がある。
ここでは、「男性といえば〇〇・女性といえば〇〇のようなステレオタイプ」や「女性が不利で男性が有利な構造」、さらに「行き過ぎたジェンダー解決策として男性が不利になる構造」に対する懐疑が話題に挙がりました。
~研究(職)のジェンダー問題~
次に、お互いに質問や気になるテーマを挙げてもらったところ、研究(職)をキャリアにする問題について、関心が集まりました。
・研究職の公募方法として、①女性限定の公募はあるが、日本はそもそも博士課程を取る女性は少ない。また、②男女の割合を考慮して、決定することもあるが、機械的に女性専用の枠を設けるのはどうなのか?という疑問がある。男女に職業選択の自由を持たせるべきで、今は男性、女性問わず研究職キャリアのリスクが大きすぎる。
・経営学では、モチベーションや着眼点が見つかりにくいものもある。例えば、化粧品のマーケティングなど、女性にしか思いつかない視点もある。理系の研究では、男女関係なく客観的な事実を扱えるので、子育て等の問題が出てきやすいのではないか。
・博士課程までいく女性がなかなかいないので、自分も就職をしたほうがいいのかと思ってしまう。教育の現場で進路の紹介を充実させたら良いのかも。
・自分が留学していたヨーロッパの大学では、安心して研究でき、就職先で応用できる道が用意されている。自分の研究分野では、国際学会で女性のほうが多く参加しているが、日本など男性が多い。
このように、職種・研究分野・国ごとによって状況に違いもあるようです。研究職を1つのキャリアとして選択する時には、女性だからこそ気づける研究の対象もあれば、男女ともに研究に打ち込める環境を整える地域もあるなど、男性と女性との間で知りやすい(理解しやすい)ことの違いや、男女平等を達成するための環境にも話が及びました。また、解決の手立てとしての教育の重要性なども挙がりました。
~森氏の発言問題~
以上の話題を基にしながら、森氏の女性蔑視発言について、参加者の考えを聞き合いました。
・科学的根拠なく発言したことは不適切だった。
・不適切だが、メディアの切り取り方も問題ではないか。森さんの発言を全部見ると、女性を評価したうえで「あの発言」があったし、Twitterで「森さんありがとう」のハッシュタグもあった。全文を見ると、そこまで悪いようには感じられなかった。
・組織のトップマネージャーに女性の割合を増やすといっても、見せかけ・シンボルとして女性を入れている場合もある。本当に女性の権利を守ろうとしているのか、疑問。
・結局、市民は女性軽視を問題にしたいだけで、解決策を建設的に考えてはいない。
・森氏の立場であの発言は良くなかった。自分たちも含めて、そもそもジェンダー問題を学ぶ機会がない。
・森氏のニュースを見て、自分の中に子育て・家庭=女性のイメージがあることを自覚した。
~私たちが無意識に持っていたジェンダー問題とは~
森氏の発言を受けて、私たち自身が無自覚のうちに持っていたジェンダーもあることが分かってきました。そこで次に、参加者の皆さんが無意識のうちに持っていたジェンダーの問題について、意見を交わしました。
・男性=理系というイメージが自分の中にはあり、これまで疑わず、安易に受け入れていた部分もある。本人の中で変えていこうとする意識が必要で、教育に頼りたい。
・自分の出身国でも、女性は結婚・出産すると、雇用が難しくなるし、子どもがいることは不利なときもある。
・学校教育の中に偏見がすでにあったのだと思う。男性が社会を統治してきた日本の歴史を知ると、男の人が上に立つというイメージが形成されるし、学校の先生も男性が圧倒的に多いと、男性のほうが聡明であるというイメージができてしまう。
・森さんの発言はあながち間違ってないのではないか?女性のほうが共感的なコミュニケーションをしてくれるという研究もある。男女の脳構造の(生物学的)違いを理解するべきではないか?社会・私たちが成熟できれば、森さんの発言も流せたのかもしれない。
・子どものときに見ているもの(アニメなど)が男女分業の考え方を形づくっている。
・男の自分の周りには女友達が多かったので、同じ人間としてみる価値観が身についていったのかもしれない。
・実際、母親が料理をする家庭が多く、それを疑っていくことが大事。学校だけでなく社会全体で考えられるようになればいい。
・人から言われることで、少しずつイメージがついていった。例えば、自分が大学院に行くと言ったら、「まだ働かないの?」と言われてしまい、女性はアカデミックな道に行かないほうがいいというイメージがついていった。ジェンダーについて考える場所に積極的に参加して、自分のステレオタイプを自覚することが大事ではないか。
ジェンダーの問題は、個人レベルと社会レベルの複雑な関係から成り立っているようです。まずジェンダーの問題は私たちの過去の経験の中にあり、経験の当たり前を相対化できる機会を持つことで、ステレオタイプの存在に気づくことができます。さらに、そうした経験を形づくっている社会のジェンダー問題を解決するために、男女の生物学的差異を理解したり、学校教育の中で無意識のうちに学習してしまう「男らしさ」「女らしさ」の先入観に対処したりといった、改革の切り口も提案してもらいました。
~参加者の皆さんの感想~
最後に、参加者の皆さんから感想をいただきました!
・女性が料理をするのは当然のように、ジェンダーは感謝する気持ちをマヒさせるから、ありがとうと言える人になりたい。
・いろいろな考え方を知ることができて良かった。解決策についても深く考えていきたい。
・アイスブレイクの中での話題ももっと取り上げたいくらい楽しかった。
・自分でジェンダーのステレオタイプについて気づいて、改善できるようになりたい。
・(性別を越えた)「個人」として人間を見ていきたいなと思った。男らしい女らしいは、言葉の刃になるから自分に対してだけ使いたい。
・男性と女性の割合は同じなので、お互い尊重できる・フェアな社会になればいい。
・全ては理解できなかったけど、会話の練習にもなって楽しかった。
特に、「男だから」「女だから」ではなく1人の人間として個人を見るというアイディアは、「男性を有利にするべきである」「女性を有利にするべきである」といった二元論を乗り越えていけるような、私たち人間や社会が成熟した先にある新たな視点が生まれたのではないでしょうか。
~ファシリの振り返り~
かんがえるソファ+(プラス)初回でもあり、実はこの企画の発案者であったので、少し緊張と不安を感じていましたが、参加者の皆さんが重要な論点・視点・アイデアをたくさんシェアしてくれたので、私自身もファシリテーションをしながら大変勉強になった回でした。私自身もジェンダーについて関心があるのですが、今回を通して、ジェンダーステレオタイプは日常に溢れていて、どんな専門分野の方でも性別関係なくたくさん議論の余地があるな、と改めて実感できた良い機会になりました!ご参加くださった皆さん、本当にありがとうございました!
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