【第56回】主体性って何?
- 高野 春来、渡辺 楓
- 2020年10月22日
- 読了時間: 6分
更新日:2021年6月22日
10月22日に本年度第11回目の考えるソファを実施しました!今回は6名の1年生にご参加いただきました.
さて、今回のテーマは「主体性って何?」です。主体性という言葉の辞書的な意味は「自分の意志・判断で行動しようとする態度」ですが、「主体性を発揮した行動」や「主体性のある人」として思い浮かべる具体例は人それぞれだと思います。「主体性」をキーワードに考えを深めていきました。
皆さんが「過去にとった主体的な行動」にはどんなことがありますか?対話に参加した方々の経験として
・友達と唐揚げパーティーを企画した。
・SNSを通じて友達を作った。
・建築事務所のオープンデスクに参加した.
・大人数の中でも自分から発言できる人間になりたくて、ディスカッションやプレゼンのある授業を受けた。
・高校卒業後の進路を考えるため、遠い場所で開催された進学説明会まで足を運んだ.
などが挙がりました。
他にも様々な経験を教えてもらいましたが,今回の参加者にとって主体性は
・自分の力を伸ばすため
・将来の可能性を増やすため
・人とのつながりを得るため
という目的のために発揮されたことが多いようです。
次に、主体性を発揮する人はどんな人か考えてみました。出た意見の一部を紹介します。
・社会で生きる中で必ずしも主体的である必要はない。敷かれたレールの上を歩くことでも生きていける。
→「やりたいことがある、自己を確立したい人」が主体性を発揮する人
・関係者の数が多いほど責任は増すと思う。だから自分で覚悟を持ってリーダーのような立場に立とうとする人は主体的といえると思う。
→「自分から責任を負いに行く人」が主体性を発揮する人
・何か行動を起こすときには「上手くいくかな?」といった不安が伴う。実際に行動に映すには,その不安を乗り越えるための勇気が必要。必要な勇気が大きいほど必要な主体性レベルは上がる。
→「不安を乗り越えて行動できる人」が主体性を発揮する人
また、主体的かどうか判断するのはその行動を目にした他人であるため、関わる人数が増えるほど「主体性レベル」は上がるのではないかという考えも出ました。
色々な考えを共有し深め合う中で、「他者から見た自分の主体性(客観的主体性)と自分から見た自分の主体性(主観的主体性)は全く異なるのではないか」という意見が生まれました。
確かに「ディスカッションやプレゼンのある授業を受けること」が主体的かどうかは、その行動をとった張本人とその行動を見ていた他人とでは異なるかもしれません。
そして最後に、ある参加者が対話を通じて得た気づきを共有してくれました。
「ひとつの行動が主体的かどうかはその人の価値観次第。他人ではなく、自分の尺度で『主体性のある人間』であればいい」
普段から他人の目を気にしがちな私はハッとさせられました。「主体性がある」とは良い意味で使われることが多いと思いますが、その尺度を他者に預けてしまうといつまで経っても「主体性のある人間」にはなれないかもしれません。
自分のことを自分で肯定するために、非常に大切なことだと思いました。
今回は「主体性って何?」というテーマでお互いの考えを共有し、深め合いました。
自分にとっての主体性とは何か、身の回りの人と話し合ってみたら新たな気づきが生まれるかもしれません。
後期も実施していきますので、考えるソファへのご参加をお待ちしております!あなたの考えを聞かせてください!
【参加した方のご感想から】
いろんな意見が聞けて本当に楽しかったです。また自分の意見を聞いてもらうのも好きなのでその機会十分に与えられていてよかったです。
いい意味で期待していた感じとは違っていました。こんなにも議論が発達していくとは思っていなく、非常に面白かったです。今回の意見として、これ!!という明確な答えは得られませんでしたが、考えが深まり非常に有意義な時間でした。
(アンケートより抜粋)
【ファシリテーターのふりかえり※】
10/12のかんがえるソファでファシリテーターをした渡辺 楓です。今回は夏休み明け第一回目のかんがえるソファでファシリテーターをやらせていただくことになりました。最初に私が想像していた10月29日の進行と、実際のかんがえるソファの進行を比較して感想を述べたいと思います。当日はアイスブレイクから3つめの質問(アイスブレイク:自分のしなければいけないものからすべて解放された状況で、休日はどんな風に過ごしますか?→①自分が主体的に行動した例は?→②主体性の持った行動の例を挙げてみましょう→③②までで主体的な行動の例を考えましたが、主体性を発揮するのはどんな人?という流れで当日は進行していました。)までは想定していた通りに進みました。しかし、③の次は④主体性ってなんだろう?という問いを想定していましたが、③の中で主体性とは客観的に判断されるもの?それとも主体的に判断されるもの?という問いが生じました。そこからやや抽象的に対話が展開され、自分が想定していたより今回は高度な哲学カフェになったと思います。自分としても主体性の客観性、主観性について思うところがありファシリテーターより参加者として参加したらもっと楽しめただろうな…など思ったりしました笑。また、私は今回このように高度な対話へと発展した理由として、興味深いキーワードに着目したからだと分析しています。次回以降ファシリテーターを務める際は、興味深いキーワードに対話中よく目を光らせておきたいと思います。
最後に今回のファシリテーターとしての反省点を述べたいと思います。反省点は大きく2つほどあります。まず1つ目は、久しぶりのファシリテーターということもあったためか、緊張してうまく問いをたてられなかったということです。私たちファシリテーターは、対話の広がりに応じて柔軟に問いを考え、それを参加者の方々に投げかけるという重要な仕事を担っています。しかし、今回私は非常に緊張していたということもあり、その作業にあまり手がいっていなかったように思います。実際、今回のかんがえるソファを振り返ると、自分が投げかけた問いの中には参加者の方々にとっては分かりにくく意味を測りかねるものがありました。このような参加者の方々を混乱させる問いは、対話の進行を妨げる原因となってしまうので、緊張している中でも冷静に良い問いを立てられるよう経験を積み重ねていきたいと思いました。
もう1つの反省点としては、私の進行のテンポが悪かったということが挙げられます。共感的な態度を示すのはコミュニケーションにおいて重要なことだと思うのですが、かといって今回の私のように話をかぶせすぎると、話の深まりが遅くなるといった状況や、参加者の方が意見を言いたいのになかなか自分に話す機会が回ってこないといった状況が生じます。対話の進行状況に応じて話をかぶせるだけでなく、対話を深めるという重要な仕事をバランスよく行えるようにする。すなわち、対話のテンポをよくすることが今後の私にとって大きな課題の一つであるように思います。
※今月から、活動ブログと一緒にファシリテーターの声を寄せる「ファシリテーターの振り返り」を始めます!ファシリテーターがその時何を考えながらアイデアを受け止め、問いを投げかけ、そして、対話をどのように進めようと計画していたのか…等について、ありのままを皆さんにお伝えします。ファシリテーター自身の反省や参加者の皆さんの思考の拡がりと深まりに役立てるとともに、全国の哲学対話実践の輪を広げることに貢献できればと考えていますので、どうぞお付き合いください!
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