【第68回】どこからタメ口?
- 西塚孝平
- 2021年1月24日
- 読了時間: 7分
更新日:2021年6月22日
1月25日(月)に開催したかんがえるソファは「どこからタメ口?」をテーマに、ご参加いただいた3名の学生と一緒に、対話を深めました。
1.テーマ設定の背景
私たちは普段の生活の中で友達にタメ口を使ったり、目上の人に敬語を使ったりしています。しかし、立場や年齢といった一般的な基準を超えてタメ口/敬語を使ったり、周りの人が使う場面を目にしたりした経験もあるかもしれません。わたしたちはどのような基準で使い分けを行っているのでしょうか。一緒に考えていきましょう!
2.アイスブレイク:タメ口と聞いて、思い浮かぶことや知っていることを教えてください!
初めに自己紹介をしながら、タメ口に対するイメージや疑問に思っていることを自由に話しました。タメ口と敬語の状況に合わせた使い分けや、文法上の基準の存在、一般的に思われているタメ口への問い直しなど、様々な関心が集まりました。
・タメ口と聞くと、留学生にとって難しいやつ、というイメージがある。教科書的なフォーマルな言い方ではなく、親しい間柄と使うタメ口は難しいという相談をよく受ける。
・仕事中は敬語、仕事が終わればタメ口のように、同じ人に対しても、時間や場に応じて使い分けている。
・丁寧語、尊敬語、謙譲語は敬語、それ以外の言葉はタメ口、というふうに分けられるのでは?
・タメ口と敬語の境界線について話したい。それと、タメ口は距離を詰めたり仲の良さを表したりするものなのか?ということも、改めて考え直したい。
3.(1)敬語を使う人と、タメ口を使う人の境目はどこにある?(2)同じ人に対しても敬語とタメ口を使い分けるとき、どういう状況で使い分けている?
次に、出てきた関心を深めるために、2つの問いを立てて考えていきました。すると、一番親しい家族と、最も目上の教授という両極端な例が挙がり、それぞれの場合で敬語やタメ口のもつ意味が変わってきそうだと分かりました。また、教授と学生のメールでのやりとりでは、敬語はよそよそしさを与える(自分と相手の間に距離を作る)だけでなく、自分が1人前として扱ってもらえる側面もある、ということでした。このような敬語の二面性も発見できました!
(1)境界線の場所について
・目上、年上、初対面の人には敬語を使う。同い年、友達、家族、身内にはタメ口で接している。
・目上や年上の人から「タメ口を使わない?」と言われるまでは敬語を使うように心掛けている。
・仲が良いかどうか。相手に心を許せるかどうか。自分が相手と対等だと宣言しているということ、対等さを相手と了解し合う必要があるから、タメ口を使うには勇気がいる。
・「対等」というワードが気になった。教授から敬語でメールをもらうとき、自分が1人の人間として対等にみられている感じもする。
(2)使い分けについて
・「祖母」が書道教室を開いているときは、自分も周りの生徒と同じように、いち生徒として敬語を使っている。仕事を終えた「おばあちゃん」と接するときはタメ口を使っている。生徒をみんな平等に扱ってもらえるよう、教室内の空気を保つために敬語を使っているので、個人レッスンだったらタメ口になる。
・1人暮らしを初めて親と距離感が出てきてから、LINEとかで敬語を使うようになってきた。親に金銭の工面をお願いするときは、下手にでるつもりで(戦略的な意味も込めて)敬語を使っている。
・別な戦略としては、親にお願いや感謝をするときに敢えてポップなタメ口を使ったほうがむしろ喜んでくれるのではないか、とも思う。
4.教授から敬語で、あるいはタメ口でメールが来たとしたら、どう感じる?
前の問いで、家族と教授という、人間関係や公私関係の距離からみれば両極端な存在が出てきました。そこでまず、教授にだけフォーカスをして、教授が敬語やタメ口を使ってきた場面を想像してみることにしました。教授との日々の対話から敬語のもつ意味が変わってきた、あるいは、メールというコミュニケーションスタイルの特殊性から、心理的距離は実際に会わないと判断できないといった意見が出てきました。
・自分は教授から堅苦しいメールが来るのは嫌だったが、タメ口で話しかけてもらったときに心の近さを感じた。そのとき、敬語はよそよそしいだけではないことを知った。
→初めは教授との距離を感じていたが、積極的に質問を受け答えしてくれるなどして、教授も自分と対等な立場でいたいのではと感じるようになってから、敬語は対等の象徴だと感じるようになった。
・敬語でもタメ口でも、その教授の人間性がみえるなと感じる。タメ口を使う教授は、生徒との距離を詰めようとしてくれてるし、敬語を使う教授は丁寧に対等に接してくれていると感じる。そこで距離を感じるとか、戸惑うとかはない。実際に接してみないと分からない。
・メールの文面だけで一喜一憂はしない。自分だったら、メールでの印象と、実際に会ったときの印象を紐づけることはしない。
5.同じ東北大生でも、初対面で会う同級生や年下に対しても敬語を使う、それともタメ口を使う?
次に、会話の相手を教授から、同じ東北大生の同級生や年下に切り替えて考えてみました。「共通性」や「素を出す」といったタメ口の発動条件や、敬語からタメ口への移行といった面白いアイディアが出てきました。
・東北大生はどんな人柄かある程度予想でき、自分との共通項もあるので、気軽に話せる。ただ、そのこととタメ口を使うかどうかは別な話で、初対面でタメ口を使う人を見ると「大丈夫かな」と心配になる。敬語から徐々にタメ口を使って、相手との距離を推し量ったり齟齬をなくしたりするものなのに、いきなりタメ口で距離を縮めようとすると、いずれギクシャクした関係になるのではないかと思う。
・同期、同年齢と分かった瞬間に、タメ口にする。相手の身元が不確定の場合は、敬語を使う。年下に関しては、プライベートな(自分の素を見せている)空間ではタメ口を使う。授業などのアカデミックな時間では敬語を使う。
・共通しているものがあるとタメ口を使いやすいのではないか。
6.家族に敬語を使うとき、どういったシチュエーションがある?
次に、もう一つの軸である家族の場合を考えてみました。家族に対しては特に、対等さや親しさの在り方や・切り替えが関わってきそうだと分かりました。
・頼み事やお願いをするとき。
・喧嘩をするとき。敬語を使って攻撃をしたり、心理的な距離をとろうとしている。
7.感想
最後に、参加者の皆さんと感想を共有しました。日頃何気なく使っているタメ口を見直す良い機会になりました!
・タメ口はセンシティブな話題だったりもするので、タメ口の扱い方やタメ口とは何かを深めることができて、これからタメ口を使うか迷った場面に役立ちそうだなと思いました。
・自分が普段タメ口をどう使っているのか、どう考えているのかを見直す機会になりました。皆さんから幅広い使い方を知ることができて、これからタメ口を使うときのヒントを得ました。これから目上な立場になってくるので、そのときの対応の仕方も考えていきたいと思いました。
・最後の、同い年と同期については色々考えさせられるときがあります。自分は浪人生として、同じ学年にいる年下の学生に対しては「タメ口で話していい」と伝えるものの、同い年で学年が1つ上の先輩学生に対しては敬語を使って接していることに気づきました。もう1つは、対面のときは敬語だけどメールなどではタメ口など、コミュニケーションの手段や状況に応じて変わってくるものと思いました。
ご参加いただき、ありがとうございました!
今年度のかんがえるソファの活動は今回でおしまいになります。
今年度は1年を通じて延べ200名以上の学生にご参加いただきました^^
コロナ禍の影響でオンライン開催が中心となりましたが、その分、学年や専攻を問わず多くの学生に興味を持っていただき、何度も参加してくださる方もいらっしゃいました。
企画SLAとしても、教師なき学習としての「かんがえるソファ」から学ぶことがたくさんあり、いち参加者として新しい視点に気づけたり、ファシリテーションのスキルを鍛錬したりと、充実した1年を過ごすことができました。
来年度も、皆さんのニーズになるべく多く応えることができるように、かんがえるソファの運営を工夫したり、新しい活動(イベント)を企画できたらと計画しているところです。
また2021年度にお会いしましょう!
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