【第62回】自分らしさってなんだろう?
- 須田華、高野晴来
- 2020年12月10日
- 読了時間: 7分
更新日:2021年6月22日
今回のテーマは「自分らしさってなんだろう?」です。
12月11日に開催し、5名の参加者の皆さんにご参加いただきました!
テーマ設定の理由
人間というのは、「周りの環境によって常に変わり続けるもの」ですよね.昔の自分と今の自分では同じ「私」であるのに、考え方や性格は少なからず変化していると感じます.どんな土地に住んでいるか?どんな人々と一緒にいるか?どんなことを経験してきたのか?またはどんなものを食べているか?といったことなど「あらゆる外部環境が私を作り上げている」といえると思います.
だとすれば「自分らしさ」というものは一体どこに存在しているのでしょうか?とてもあやふやなこの「自分らしさ」というものは存在するのか、あるとするならばそれは一体何なのか.考えるためのヒントを一緒に探っていきたいと思います.
議論の軌跡
アイスブレイク
まずは参加者の皆さんに打ち解けてもらうために「私はこんな人です」と自己紹介をしていただきました.紹介していただいた「自分らしさ」を一部抜粋しますと
・脚本の執筆活動をしている.
・好奇心旺盛で5つのサークルに入っている.
・知らない人に対して気軽に話しかけられる.
・感受性が豊か.ドラマや行事に熱中して泣くこともある.
・興味を持ったことには没頭するが,興味がないことにはとことん関心を示さない.
などなど,自分が取り組んでいることや自認する性格を紹介してくれました.
自分らしさを感じるのはどんな時?
アイスブレイクで雰囲気が解けてきたところで,本題に入りました.ファシリテーターから投げられた問いは「自分らしさを感じるのはどんな時?」でしたが,まずはそれぞれの「自分らしさとは何か」を共有し合いました.
・自分は3時間ずっと一人で話すことができるが,それは誰にでもできることではないらしい.「他と違う」ことが重要そう.
・人は自分が満足した生活をしているときはそれが自分らしさだと思いたいのではないか.私は自分のネガティブな側面を変えたいと思っており,欠点を自分らしさとは言いたくない.「ありたい自分に近づこうと努力している自分」が「自分らしさ」であると思いたい.
・自分の欠点に直面した時にも「またやっちまった…」と自分らしさを感じる.(例:宿題を〆切ギリギリまで溜める,寝坊や遅刻)
・ネガティブな特性も自分らしさと言える。また,必ずしも周囲を害するとは限らない.
・ある特性を自分で受け入れることができていたらそれは「自分らしさ」と言っていいと思う.
ここで,「ネガティブな側面を自分らしさと認めても良いのか?」という話題が生まれました.「欠点を”自分らしさ”と認めてしまうと自分はその欠点を改善し,より良くなることができなくなってしまうのではないか」という懸念からこの疑問が生じました.
どうしようもない欠点があるのも人間らしくていいじゃないか
上記の話題に対して次のような発言がありました.
・欠点は必ずしも克服する必要はない.欠点を受け入れた上で別の良い面を模索する生き方もあると思う.
・「落ち着きがない」という一見欠点に見える特徴も「行動力がある」とポジティブに言い換えることができる.どうしてもポジティブに捉えることができない欠点も現実には存在するけれど.
・「どうしたってポジティブにできないこと」があることもまた人間らしくて良いのではないか.
これらの意見が「ネガティブな側面を自分らしさと認めるべきなのだろうか」と考える参加者の「自分らしさ」のイメージに変化をもたらしました.
「“変えなくてもいい自分の何か”が自分らしさと考えていた.しかし,自分らしさとは生きている間に変化してもよく,変えようと努力してもよいものであると気づいた」と自分らしさへの考えが変わったそうです.
今回の対話では,自分のネガティブな側面に対する受け止め方は人によって異なることがわかりました.「人間だからしょうがないよね」と欠点を肯定して受容する人もいれば,「自分にはこんな欠点がある.だからこの欠点を改善したい」と努力する人もいます.両者のどちらが優れているわけでも,価値があるわけでもありません.ただ,様々な考え方に触れることができたのではないでしょうか.
参加者の感想
最後に参加していただいた皆様の感想を紹介して,今回の議論の軌跡の結びといたします.
・「自分らしさを認めるかどうか」という話題にシフトしたことが面白かったです.自分が自分をどう思うかと,他人が自分をどう思うかは別の話だと考えています.振る舞いと見られ方という2面性があるのかなと思いました.
・「自分らしさとは結局DNAじゃないか?」と思いながら話に臨んだら全く違う流れになって面白かったです.特に面白かったのは「ネガティブなことを自分らしさと固定したら,それはもう変わらないのではないか?」という意見でした.
・私は自己肯定感が高くありません.それは自分の弱さを受け入れきれていないからだと気づくことができました.
・今日のトピックは日頃から考えることでした。自分が気持ちよければそれで幸せなのではないか.私自身自己肯定感が低いとは思いませんが、実はそんなに高くないのかもしれないと思いました.普段モヤモヤしていることを解決するためのヒントを得ることができたと思います.
・色々な人が考える「自分らしさ」から様々な人生観を聞けてよかったです.自分に対するモヤモヤした感情が壁を乗り越えるエネルギーになることもあるため,全てを自分らしさと肯定して受け入れる必要もないのかなと思いました.また,自分の生き方では乗り越えられない壁があることに気づいた時,壁を乗り越えるためのヒントを自分以外から得ることもあるのかなと思いました.
ファシリの反省
今回ファシリテーターを務めた須田です。みなさんご参加ありがとうございました!
ここではファシリテーターの視点から、今回の対話を振り返ってみたいと思います。
今回のテーマは「自分らしさってなんだろう」ということで、多くの人が一度は考えたことがあるような身近な話題だったかと思います。私自身がこのテーマを設定したのは、昔のイメージからがらりと変わった人を見たときに「昔のあの人と今のこの人は本当に同じ人なの?」と思ったと同時に「向こうからみたら自分自身もまったく違う人に変わったように見えるのかもしれない」と考えた出来事があったからです。日々変化する私たちですが、変化しているにもかかわらず何か変わらないものがあるような気が(私は)しています。では「私」という存在が一貫して存在していると感じさせる所以はどこにあるんだろうか?そんな疑問が今回の哲学対話の設定の根底にあります。私自身はこのテーマに関してあまり明確なイメージを持つことができなかったので、今回の対話を通して皆さんと一緒に探していくことができてとても良かったなと感じています。
ここからはファシリテーターの技術的な反省になりますが、「ここでまとめようかな」「話せてないひとに振ってみよう」と思っても挙手している方をみるとどうしても当ててしまって、結果的に本筋ではないところにも時間を割いてしまい、今回は想定よりも進むことができませんでした。そして結果的に自分らしさとはなにかという結論は、対話の時間内には出すことができませんでした。またこれに関してもうひとつの原因としては、私自身がなにかまとめや説明をする際にイメージの共有程度のつもりで抽象的な言葉を用いてしまい、すこし話がこじれてしまったということもあると思います。抽象的な言葉を使う時には全員がそのイメージを共有できる程度の具体的な説明を付け加えることが必要だったと思いますし、それが他の参加者の方であっても意味の確認をとってイメージの共有を忘れないことが、対話をみんなで進めていく上で必要だと思います。
他者の考え方に触れることで,自分一人では生まれない気づきがたくさん生じたことを嬉しく思います.改めまして,ご参加いただきありがとうございました.またお会いできることを楽しみにしています!
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